デジタルフォントの種類

デジタルフォントとは、WindowsやMacといったコンピューターやスマートフォン、タブレットなどのデジタル機器上で表示される文字(書体)を指します。これは、紙に印刷される活字と違い、ソフトウェアやハードウェアによってレンダリングされる文字です。デジタルフォントには「PostScriptフォント」「TrueTypeフォント」「OpenTypeフォント」といったものがあります。今回はこのデジタルフォントの種類と特徴を解説していきます。

PostScriptフォントは、Adobe が開発したベクター形式(線や色 、形といった情報を数値のデータで管理する形式)を使用したフォントです。PostScriptフォントには複数の種類があり、有名なものは「Type 1フォント」「CIDフォント」があります。1984年に発表され長く利用されていましたが、1996 年頃からは汎用性の高い「OpenType フォント」が採用されるようになり、2023年1月にはAdobeのサポートも終了し、最新のillustratorでは、フォントをインストールしていても、読み込まれなくなりました。

  • 正式名称:PostScript
  • 読み方:ポストスクリプト
  • 拡張子:【.pfm】

● PostScriptフォントのデータについて

PostScriptフォントのデータはMac OS 9までの形式を利用しているので、リソースフォークとデータフォークを使用したデータになっています。このデータをWindowsに移した場合、リソースフォークが消失してしまうので、データが破損してしまいます。これはMac上であってもWindows用のデータ圧縮方法を利用した場合や、Windowsと共有のクラウドにデータをアップロードした場合も同様にデータが破損する場合があるので注意しましょう。

TrueTypeフォントは、AppleとMicrosoftが共同で開発したデジタルフォントです。1990年に発表され、文字の形状を2次スプライン曲線によって定義し、フォントデータと文字幅などの情報を1つのファイル(拡張子 .ttf)にまとめて保持するため、インストールや管理が容易で、WindowsやmacOSなど主要なOSで広く採用されてきたフォント形式です。

  • 正式名称:TrueType
  • 読み方:トゥルータイプ
  • 拡張子:【.ttf】 / 【.ttc】

● TrueTypeフォントのデータについて

TrueTypeフォントのデータは、同じファイル名、拡張子であってもMacとWindowsの互換性は無いのでデータの取り扱いには注意が必要です。
Adobeのアプリケーション上ではフォントを選ぶときにアイコンで「TT」と表示されているものが、TrueTypeフォントです。

OpenTypeフォントは、AdobeとMicrosoftが共同開発した次世代のフォントフォーマットで、1997年に発表されました。TrueType、PostScriptのアウトラインをベースに、単一のフォントデータに文字の形状情報、多言語対応、に加え、組版に関する様々な機能が利用でき、65536個の字形を登録することができます。印刷品質とデジタル表示の両方に優れた柔軟性と拡張性を備えており、非常に利用率の高いデジタルフォントです。

  • 正式名称:OpenType
  • 読み方:オープンタイプ
  • 拡張子:【.otf】 / 【.otc】

● OpenTypeフォントのデータについて

OpenTypeフォントのデータは、クロスプラットフォームに対応しており、MacとWindows、両方で同じフォントファイルが利用できます。
Adobeのアプリケーション上ではフォントを選ぶときにアイコンで「O」と表示されているものが、OpenTypeフォントです。

● バリアブルフォントについて

OpenTypeの規格を利用した新しいフォントに「バリアブルフォント」(Variable Font)があります。Adobe、Apple、Google、Microsoftが共同で開発したフォントで1つのフォントデータ中に、太さ、幅、傾きといった複数のスタイルを可変パラメータとして内包できるフォント形式です。従来の方法でフォントの太さを変えるには「Medium」「Bold」「ExtraBold」といった、同じフォントであっても太さの違う別フォントのデータを選ぶ必要がありました。バリアブルフォントでは、太さの違うフォントデータを用意する必要がなく、1つのデータで柔軟な表現が可能で、Webデザインにおいてレスポンシブ表示のサイズ調整や、アプリのUIなどでの活用され始めています。
Adobeのアプリケーション上ではフォントを選ぶときにアイコンで「O」+「VAR」と表示されているものが、バリアブルフォントです。

デジタルフォントは、従来の金属活字や写真植字に代わって、画面上の表示やプリンターによる出力、さらにはWebデザインやアプリケーションのユーザーインターフェースなど、さまざまなデジタル環境で文字を視覚的に表現するために不可欠な存在です。今後デジタルフォントは、さらに使いやすく、より多様な文化や言語に対応できる方向へ進化し続けるでしょう。フォントは単なる“文字”ではなく、情報の伝達、感情の表現、文化の共有を支える基盤であり、その重要性はさらに高まると考えられます。